「ただいまー。外、風強かったー」
スニーカーを脱ぐ音、重い扉が閉まる音。男と一緒に部屋の中に入ってきた風が湿った肌を撫で、少女は身を震わせた。
「丁度時間帯が悪かったなあ。朝メシて思ってたおにぎり売り切れてたよ。高菜のヤツ。まあ明日早目に出ればいいか。あ、でもこれはちゃんと買ってきたから。プリン。ほら。ぜーたくに生クリーム乗ってるやつにしたよー・・・椰智?」
黒いソファの上に横たわるのは、桃色のキャミソールを着た少女。
シーツに半分巻かれている状態で、目隠しで視界を遮断され猿轡のために唸りに近い声を漏らし、後ろ手に包帯で両手首を巻かれて、股の間の刺激に身体をひくつかせている。腿を伝う液体は、根元に溜まったのもが緩やかに流れ落ちているものだ。
コンビニエンスストアのビニール袋を提げた男はダイニングテーブルにそれを置き、中からプリンだけを取り出し冷蔵庫に仕舞って再びリビングに戻ってきた。片方の手をソファにかけて、シーツを摘み上げた。
「どのくらいいった?」
真平らな声で少女の耳元で呟く。噛ませた布を口から外して、唾液で汚れたタオルを腹の上に置く。苦しそうに息を吐き続ける唇に触れて、右手を内股に滑らせた。
「ひぁうっ!」
ぐちゅ、と、振動し続けていた、少女の陰部に挿し込まれていたバイブレーターを掴んで押し上げる。そこの肉を拡げて擦り上げて、舌先で転がした。暴れる脚は肩に掛けられ、目隠しの下で目をぎゅっと瞑る。喉から出るものを抑えられず未加工の声が上がる。
「はっ、や、あっ、す、おう、くッ」
片手で秘裂を弄び、もう片方で絹の上から膨れた胸の頂を指で挟んで強めに捏ねる。少女の身体は激しく震え、股の間はしとど濡れ溢れ水音は更に響き、挿入されて感覚を麻痺させていただけの異物は膣を熱くさせ、小さな足の指が反り、息が詰まった。精力剤
高みまで昇り切って、びくんと撥ねる。
「あ、・・・う、あ、周防、くん・・・すお・・・」
「やっぱちゃんとイジってあげないとダメみたいだね。一度にこんなになっちゃった」
「お願、めかくし、とって・・・変、いつもより」
それから、両手を縛る布も取って欲しいと、仰向けになって痛いと哀願する。
彼は手についた愛液を舐め取り少女の臍から曲線に撫ぜつけながら、どうしようかな、と返す。
「っつ、いじわるしないで・・・コレやだ・・・はずかしいよっ」
「椰智が良いよって最初に言ったんじゃん」
「だっ・・・て、ちょっとだけって、周防くん言うからぁ・・・」
「俺しかいないのに」
「!っ、あ!」
未だ挿入されたままになっていた器具の振動の激しさが増した。
流石にそっちはすぐ抜いてくれると思っていたから言わずに我慢していた。彼のでないそれは、戻ったら直ぐ取ってあげると言っていたから、断ったら別なものでもっと酷い事をされそうな気がしたから渋々承諾したのだ。だから、
「うっ・・・そつきぃ・・・」
「え、何?感じるって?・・・椰智ホントはこういうやつの方が好きなんじゃない?」
一度達して一層敏感になった内壁をこれまで以上に擦られ掻き回されれば誰だっておかしくなる。少女はかぶりを振った。喋れば舌を噛んでしまいそうだった。会話がまともに出来なくなりただ喘ぐ彼女を少しの間見下ろしていた男は半身を屈め、先程よりも丁寧にそこに舌を這わせた。
腹部に熱が集中する。まだ午後4時半を過ぎた頃だったが、厚いカーテンが陽の光を塞いだ狭い闇の中の更に深い、けれど明るい闇の中で、摩擦されて彼女は啼いた。男の肩に掛けて組んだ脚が力無く崩れ落ち、バイブレーターが引き抜かれると同時に熱い迸りが走るまで無遠慮な声はおさまらなかった。そこでようやく目隠しが外された。そして今日初めての『まともな』深い口付けがなされた。溶けきった表情で頬から耳を舐められるままにされていたが、「こんなになるの初めてだね」と、耳朶を甘噛みしながら言う声に不意に正気を取り戻し、震える膝をくっ付けてうまく回らない舌を必死に動かした。
「・・・や、っつ・・・わたし」
「おもらしまでしちゃうなんてさ」
理性が流した涙が顎まで到達しない間に、濡れたシーツごと彼女の身体は浮き上がった。抱きかかえたままキッチンを横切る。
「周防、くん」
「このまま風呂で洗濯しようね。その方が手っ取り早いし」
1時間前に見た顔が異様に懐かしく、しかしまたその整った優しい顔で彼女の小さな身体を玩んだ男の内面に慄然とするが、先に見える密室で容赦ない扱われ方をされると思うと震えが止まらなくなる。無論悦びが多く含まれたそれに、その恍惚に逆らえる訳がなかった。
積み上げられたビデオテープ。音楽CD。
それらはすべて少女の要望からその部屋の床に重なった。彼は「彩り」と言った。
彼の生活空間に踏み入れること。緊張やら、申し訳なさやら、不安やらが大部分占めていたが、しかしやはりこの上なく嬉しかった。はっきりと「初恋だ」と自覚してしまった時の動揺は、今まで感じたことの無い、掴み所のない、まずどうしたらいいのか分からない感覚を持たされた少女らしいものだった。
細かい事が気になりだし、朝の登校時、彼の出勤と重なり進行方向からスーツを着た彼がやってきて、屈託のない笑顔で「おはよう」と言ってそれに返すだけで、今日はちょっと声が上擦ったかな、ちゃんと笑えてたかなと、その日の午前中いっぱい気にしたりした。それはマンションの合鍵を渡してもらえるほどの間柄になって暫く経つまで変わらなかった。歩み寄りが深まるにつれ、感じる不安も増していた。『無理をしている』。彼がどんなビデオが見たいかと言った時、ちょっと昔の恋愛ものがいいとリクエストして借りてきてくれた所謂トレンディドラマで、『彼女が彼に相応しくない理由』でそんな台詞が出てきた際にはハッとしてしまった。けれど一緒にそれを見ていた彼はまるで気にならないらしかった。
時折、自分は彼の前で挙動不審と思われる態度をとっているが、彼には元から引っ込み思案気味だと思わせているから、むしろ対人関係を学ぶためにあそぼうと言ってくれているくらいなのだから、「無理して」なんて言い出しはしない。けれど当り前ながら、1個の“女”と思われてもいないのだとも思った。なら懸命に年の離れた妹の振りをしよう、それで傷つかずに済むならと、一種の開き直りが出来たのは彼に出会って2年目、恋の芽生えから半年ほど経過した頃だった。
数日置きに入り浸るのも習慣になったある日、いつも通り学校から帰って宿題を済ませてから彼の部屋を訪れた時、鍵穴に差し込んだ合鍵の回り方がいつもと違うのですぐ引き抜き、ノブに手を掛けた。
連続ドラマのビデオを纏めて借りてきてくれていて、それが彼女の興味をそそる話だったので、なら俺が居ない時でも勝手に上がって来ていいよ、と許可をくれたので、まだ家主が帰宅しない夕方に部屋に入らせて見させてもらっていた。鍵の感じが違うと思ってドアを押すと、やはり扉は開いていた。今時マンションなのにオートロックにもなっていないのに、開けっ放しなんて無用心だと独り言を漏らしながらも、玄関の仕事用の革靴を見て、私が今日も来ると確信していたのかな、などと、こそばゆい気持ちになった。男根増長素
「おじゃましまーす・・・」
それほど広い部屋ではない。入ったらすぐに声は届く筈だが、返事は返ってこなかった。リビングの隣を覗くと、水の流れる音がした。シャワーを浴びている。彼女は少し迷ったが、結局ソファのいつも自分が座っている位置に腰を下ろした。テレビをつけた。いいよねいつもと同じだもの、以前ほど彼に対して神経質にならなくなっていた彼女はビデオデッキの電源を入れた。前に来たのは2日前だったから、ささっているビデオが続きだと、再生ボタンを押した。しかしそこに映し出されたのは、ドラマの前話のダイジェストではなかった。
「・・・あっ、 え?」
そこに表れたのは、裸の男と女が絡み合っている場面だった。
女が下になり、男の腰に脚を巻きつけて、緩慢な動きでふたつの体はぶつかっていた。ああ、と、苦しそうとも嬉しそうともつかない喘ぎ声が上がる。彼女は硬直した。すぐにはその状況を理解できなかった。ブラウン管内の肉の戯れから目を逸らす事も出来ない。こんなものは見たことがない。けれど、身体がだんだん火照っていくのを感じる。緩慢だった動きが激しくなって、女の悲鳴のような声もだんだん短くなる。少女は見入った。喉が鳴った。
画面の女は、断末魔の如き詰まった声をあげた。
「・・・・・・あ・・・・・・」
「・・・やっちゃん?」
ガタン、と、テーブルに足がぶつかった。心臓が飛び出すかと思うほど驚いた。自分の名前を呼ぶ声の方を、恐る恐る振り返った。
「周防くん・・・あ、あの、わたしッ」
泣きそうになって目をこすってから、慌ててテレビのリモコンに手をかけた。
「ごめんなさい・・・!わたし、ビデオ・・・ドラマのやつだと思ってて、その、確かめないで、こ、こんなの」
ジャージのズボンを穿いて、上半身裸で頭にタオルをやって、彼は平素よりは困ったような表情で立っていた。しかし彼女の狼狽振りにむしろ冷静な顔になって近づき、リモコンを持った手の首を掴んだ。
「ごめんなさいって?」
先ほどまで湯を浴びていたはずなのに、男の手は冷たかった。停止ボタンを押そうとした指が動かず、彼女は頬だけを染めて、額を青くさせて俯く。
「これが何だか分かるんだ、椰智」
「わかっ・・・あ、わたし、が、」
テレビ画面の男女は、今度は体の位置を変え、女が男に馬乗りになって同じように腰を振っていた。サッと目を伏せる。
「・・・わたしが見ちゃいけないのだっていうのは、分かる」
「ああそうだね。――でも、感じるところはあるでしょ、コレ見て」
からかう調子ではない。手首に力が加わる。耳に女の喘ぎ声が響く。
尋常ではない事態に、取り乱すまいとするだけで必死だった。
(周防くんは、こんなもの、見てる)
バレンタインデーにチョコを渡した時、さり気ないのを装って恋人の有無を尋ねてみた。
「それがさ、俺全然モテないんだよね」。
彼女がいるのなら自分をこんなに気に掛けてくれたりしない、それは分かっているが、いつ鍵を返してくれと言われるかもわからない。だからホッとしながらも、次の瞬間には不安になっていた。そんなことばかりだった。けれど勇気を出して積極的になった所で相手にならない、困らせるだけなのは目に見えている。
しかしやっぱり彼は“男”だった。学校の男子ともまた違う。
「・・・わっ」
「えっと、フロイトだっけ」
掴んだままの手を引かれて、グイと後ろから抱き締められて、ソファの上で、彼の膝に座らされた。裸の胸を背に押し付けられて、ぞくりとした。
「小児・・・幼児性欲論ってさ、幼児にも性的な感受性があるってやつ。・・・それにあるんだから椰智に無いわけないよね」
「なっ・・・え、か、からかってる、のっ?」
「ん、や、訊いてるの。無いの?体が変に疼く時」
服の上から胸を撫でる。太腿に触れる。内股に滑らせる手を思わず掴むが、その手をどかせられず、ただその手の動きに沿う形になってしまった。天天素
「何・・・周防くんどうしたのっ・・・」
「勿論いるんでしょ、好きな奴くらい。クラスなんかに。こういうところ触って欲しいって思った事一度も無いの」
顎を捉まれ、無理やり正面に向かされる。絡み合い縺れる男と女。ひとつの場所で繋がり合っている肉の塊。
どうしてこんなことが、
「・・・ないよっ!がっ、学校に、好きな人はいない・・・」
「・・・そっか、じゃ、そいつのこと考えててなんて苦し紛れも言えないか」
少女の凹凸の無い、ただ細いだけの腰がぐっと引かれた。男は脚を広げ、少女を更に深く座らせる。彼女は身動き取れないまま、股の間に硬い感触を受ける。ショーツの上から割れ目をなぞる指を感じる。映像の男女は陰毛同士をくっつけて、混ぜ合わせる動きをする。悲鳴は喉を通らなかった。
「――ほら、見てみなよ。汚いだろ。醜いよね。あんな風にハダカで抱き合ってさ、滑稽だよね。・・・でも感じてこない?この辺り、熱くなってこない?」
「ふっ・・・」
谷間の肉を捏ねるようにして擦り合わせた。そして彼女を膝に乗せたまま少し腰を上げてジャージのズボンを下げた。今まで見た事のないグロテスクな肉の塊が突き出される。確かにそれは恋をしている相手の一部分だと認識したが、拒絶の言葉が喉を通る。
「なっ・・・いや!だめ!周防く・・・」
「なかなか濡れては来ないね。初めてなら当たり前かな。――ねえ、やっちゃん、俺のこと嫌い?こんなの気持ち悪い?」
「そん・・・周防くんが、きっ、きらいなんて・・・」
「本当はこんな済し崩しっていけないと思ってたんだけどさぁ、俺が嫌いじゃなければ少しだけ我慢して。・・・そしたら、俺、を、」
「周防くん!!」
耳朶に触れるか触れないかの距離に口唇を寄せて囁く言葉に耐えられなくなり、彼女は思わず声を張り上げた。様子を見ながら触れていた手の動きが強張る。
彼女は彼のズボンの腿の部分を掴んだ。
「なん・・・なにそれ・・・ずるいよ、ひどいよ。なんでっ・・・そんな言い方するのっ!?」
「なら他にどんな言い訳すればいい」
ソファが軋んだ。後ろから小さな身体を抱く腕に、力が入った。
「椰智みたいな子とこんな風にさ、したくなったって、どう言ったらいい?年の差なんてカンケー無く愛してるって言えば応えてくれるの?それで納得してくれるの?」
「え、や・・・だって、そんなの一度も・・・」
「無いよ。言える訳ないだろ。他の解消もなくてこんなの見てるよ。・・・悪い?誰も傷つけてなかったよ?」
いくらか枯れて聞こえる声に所謂社会に対する罪悪が篭っていた。
今までは、少なくとも彼女といる時は良識的な大人と言いきれない振る舞いを見せる男の、思ったよりも大人な、それでいて臆病な側面を感じた。
こんなものを晒しておいて何を言っているんだろうと、怖さが和らいできた。
喉を鳴らして、ズボンから手を放す。
「・・・ね、周防くん。わたし学校には好きな男の子なんていないよ。学校にいない、から、・・・だから、ちょっと無理してでも会いたい男の人なら、いる」
そう言って、そっと脚の間に手を伸ばした。人間の最も人間らしい部分の、奇怪で正直な肉の塊を両手で包んだ。先端の膨らみをやさしく指で押してみた。
「椰智」
「わたし、そのひとのなら、して・・・っで、できる、よ」
そこまで言ってしまうと、頬が一気に燃えるように熱くなった。そして彼の体から、石鹸の匂いが少し強く香った。自分は今、どんな匂いなのだろうと、首筋に顔を埋める男に訊きたかったが、訊かなかった。
代わりに、どうすればいい、と彼に問う。
「扱いて。・・・って、・・・両手でこう、握って・・・擦って」
それだけ違う意思を持つかのような熱い棒状の肉塊を、なるべく根元に近い部分から撫で上げるように、言われたように扱った。やりすぎたら痛いのかと思ってやさしく触れていたが、いくらも経たないうちに「もっと強く、」と、片手を添えて握り締められ、血管の浮き出ているそれを、その形と感触を、嫌だと言ってしまいたくなるくらい、知らされた。
「ふぁ!?」
肉棒の先端から滲み出ているものをぼんやり見ていると、少しだけ弄られて放って置かれた彼女の秘部に指が滑り、今度はショーツの脇から、3本の指の腹で肉の谷間を揉み、探る動きをした。くちゅり、と、ビデオからいつまでも聞こえてくる喘ぎの中、聞こえない水の音を聞いて彼女は眉根を寄せた。
「やだ・・・わたしがっ、今、すおうくんにしてるのっ・・やめて。できなくなっちゃ・・・」
「駄目。ここでイかせて」
彼女はぞっとした。陰毛と陰毛が絡みつく映像が脳裏をよぎる。今も2人は繋がったまま、背中からのアングルで映っている。いつまで続くのか、段々永遠に終わらないような気になってきた。そして自分の手の中のものを見る。益々膨張してきたそれを、自分のこの部分に挿入するなんて、死ぬのではないかと思う。扱く動きは止まらないが、恐怖と不安で一杯になる。少女のその心境に気づかない筈は無いが、彼は遠慮のない手つきでショーツをずらした。亀頭が花弁に押し付けられる。しかし彼女は掴んだままの手を放せない。
広げた股がビクリとなって、気持ちの分腰が浮いた。
割れ目が肉棒に吸い付き、そのまま5、6度擦り合った。
「・・・っ、はッ」
「す、・・・ん、あっ!」
陰核を潰され、彼女の身体は撥ね、彼は少女の胴に腕を巻いたまま達した。
精液がショーツの中に満ち、尻の方にもどろどろした液体が向かうのを感じる。
そして自然彼女の両手も汚れたが、あまりの事にそのリアルな体液も、ビクビク動き次第に小さくなっていく肉塊の感触も、頭が真白になった感覚も、逆に非現実的なものに思えて、荒く息を吐きつつそれを目で確かめられずにいた。
顔と陰部は熱いのに、そのほかの部分は血が引いていく。勢いだけで、もう引き返せないことをしてしまったと、不意に冷水に打たれた気分だった。男宝
「椰智」
しかし後ろから自分を抱きしめている男を非現実にはしたくなくて、か細い声で彼の名前を呼んだ。
「周防くん・・・そっ、あの、・・・だいじょうぶ?」
大丈夫かなどと訊いて、もし大丈夫じゃないと言われてもこれ以上何をどうする事も出来ないと思いながらも、そんな風にしか言えなかった。
「これでいいの・・・?わたし、まちがえなかった?周防くんこれで、よくなった?」
「良かった」
彼女の手が外れた。
汚れた両手は拳を作り、その置き場に困った。しかし上半身を傾けられ、彼の胸板についてしまった。彼は口付けを止めなかった。口唇を捉えてすぐに舌を差し入れ、短い舌と絡ませた。
「・・・甘い」
接吻しながら聞こえたそれに、家を出る前にプリンを食べてきたことを思い返した。
とろける食感の、カラメルの無いただ甘いだけのプリンだった。
足や腕が、冷えていた部分が温度を取り戻し、その温かさを求めて、それが初めてのキスだという認識のないまま懸命に口唇を貪った。彼の舌は何の味もしなかったが、深くなればなる程、口の中が甘く満たされていった。
気づいた時にはビデオは止まっていた。そしてはじめて、部屋に木霊する甘ったるい女の声は、自分の喉から出ているものだと知らされた。
「んああッ!」
狭いバスタブの中、秘部を右手親指でぐいぐいと刺激され、乳首を吸われる。背中が滑りそうになるが強く押し付けられているので大きく開いた脚が宙に浮く。
既に洗い場でボディソープを泡立てた手で全身を揉まれ、意地の悪い言葉を吹き掛けられ、覚えているだけで4回は小さな死に追いやられた。
「こんなにちっちゃいのに、ヤラシイ身体だね。折角洗ってあげてるのにいつまでも下のクチは涎垂らして」
「もうやっ・・・めだよぅ・・・すおうくんの、いっ、れて・・・」
後ろ手の包帯は巻かれたままだった。キャミソールは捲り上げられる所まで捲られていて、湯を含んでぐっしょり濡れている。
抱きつく事も拒むことも出来ない。――というよりも、「したくない」、のだが。
「ホントは外せる、んでしょ」
「・・・・・・」
少し癖っ毛で、いつもは外に跳ねている長めの髪が湯をかぶって真っ直ぐだらりと垂れている。彼を見つめているだけでおかしい程胸が高鳴り、顔を背ける。
「ちょっとカタ目に縛ってるって言っても蝶々結びだよ。少し隙間もあるし。ホントに嫌ならもがいて指使って外しなよ。後ろ手は痛くて辛いんだろ」
「・・・それはっ・・・だって、」
だって、周防くんがつけたものだから。
彼につけられたものは彼に取ってもらいたい。
彼に反することは何もしたくない。
そんな風にしか思うことの出来ない時が最も溺れている自分を感じる。
いくつも恋をする人間が主体のドラマを見た。イゾンする関係がケンコウテキで無い事はそれらを見ていれば自然に分かってくる。具体的な考察をしろと言われたら上手く言葉に出来ないが、すべて相手の思うままになりたいとか、何だってして欲しいという先に幸せな未来はない。けれどそれは望まず今、ただひたすら抱いて貰える喜びを選んだ。始まり方は異様だったが、傍から見たらその全てが異様な関係だ。先の事は考えたくない。このひとの心変わりなんて、息が止まりそうになる。
「・・・そーやって俺を甘やかすから。椰智をこんな風に閉じ込めちゃうんだよ」
「だって・・・すおうくんだもん・・・すおうくんだからっ・・・好きだから!・・・いいの・・・すおうくん、すき・・・」
その時ようやく彼はシャワーのノズルを放して、それよりも太い、血液の滾った塊を彼女の前に突き出した。そして包帯を外して、やわらかく小さな手にそれを掴ませる。今では口に咥えて奉仕することも覚えたが、その余裕はなかった。すぐに挿れて、掻き回して欲しい。亀裂に導いた。そこまでするとようやく男は少女の腰を浮かせて、身を引き寄せた。
歓喜の悲鳴は彼の唇にのまれて、両方の口を塞がれ抱き締められて、全身濡れた身体をぶつけ、背中に回した腕に力が入り、爪が食い込んで血が滲んだ。
透明な液体が溢れるそこも、初めて迎えた時出血が酷かった。
指で馴らして、いくことが出来ていても、男根の圧迫はその比ではなかった。
こんなに苦しくて痛いこと好きな相手でなければ絶対に耐えられない。知らない男性に乱暴された、などという事件を耳にして、好きでもない人間にこんなことをされるなんて考えたら、恐怖で身震いがする。――周防くんだけ、周防くんだけ、周防くんだけ。ただひたすらの快楽に転じてからも、当然の心情だ。
1度目の射精が済んでも彼女の中に入れたまま、何回もした。
流石に限界が来て彼の胸にぐったり凭れていると、せっかくだから少し沈んで上がろう、と、前もって半分くらいまで溜めた湯が温くなっているバスタブを指すので、深く考えることもなく即座にこっくり頷いた。
底の栓を抜いて戯れのようにまた愛撫が始まったのは、一息ついて身体が解れかけていた頃合だった。
「参っちゃうよね、ニンゲンって万年発情すんだから。・・・何時までも何時までもフラチな事考えて、しちゃうんだから」
少女の右胸と左胸の大きさを比べながら、その先端の膨らみを捏ねる。
「ま・・・ね、もう、やめよう?つかれたよ・・・」
「俺はあんまり疲れてない」
「でも、明日も会社だって・・・」
「お子様は気にしなーい」
不服そうに口を一文字にして彼の手をぐっと押した。子供だと言われて腹を立てることが子供だが、彼女の理は真っ当なものだった。
「怒んないでよ。・・・あのさ、昨日急に辞令が出て、来週から出張になったんだ」
「え・・・どこ?」
「愛知。順調にいっても2週間くらいはかかるから。勿論メールはするよ。でもいつもより長いのは確実だから。ビデオ借りてこられないや」
「そんなのはっ・・・いい、けど」
彼の分泌液で満ちた身体。もう充分過ぎるほど注がれたのに。欲しがって飲まされて体力の限界を感じていたのに、急に切なくなって抱きついた。彼は背を反らせ、髪を弄くりながら抱き締め返した。威哥王
「俺はこの肌を思い返せばそれくらい耐えられると思うけど、椰智は・・・その内我慢出来なくなるんじゃないかと思ってオモチャで試してみたんだけど・・・嫌みたいだね」
「あたりまえだよ。いやだよ。・・・周防くんじゃなきゃ、やだもん」
「・・・俺、」
彼女の尻を掴んで持ち上げる。首にしがみ付いたまま、彼が自分の体を仰向けるまま任せて、底に背中をつける彼と肌をぴったり合わせた。その身体を両手がぐっと捕まえる。
顔を上げると、唇が触れてきた。
「俺さぁ、こんなの初めてなんだよね。好きになると偏執的になるっていうか、・・・あ、わかるか。で、すぐ欲しくて堪んなくなる。それで逃げられちゃう。だから椰智はモロにタイプだったけど、このまま大きくなってくれるか、いつまでも見ていたいと思った。せめて他のに取られないように、気を引かせるだけでいっぱいだった」
少女を起こして腰を引く。馬乗りに跨がせ、小指の先端を割れ目の始まりに滑らせた。
「んっ・・・!」
「ねぇ、椰智が挿れて?」
男の胸板についていた柔らかな手が緊張で強張る。しかしそれも一瞬で、焦れる心が腰を浮かせた。敏感な部分に滾ったものが触れるだけで頂点まで達してしまいそうになる。しかし男の手に支えられながら、愛液が溢れるそこを拡げてゆっく飲み込んでいった。
「あっ・・・ん、ぅ、う・・・あ・・・」
「・・・分かっているのにどうしてこう上手くコントロール出来ないんだろ。こんなに俺の事好いてくれてるって分かっているのに、教えたのは俺なのに、俺以外に抱かれてたらどうしようなんて、信じきれないなんて、酷い奴だね」
手のひらが彼女の両胸に添えられる。乳首が抓られて、下腹部に神経を集中させていた身体は大きく撥ね上がり、まだ奥まで達していない肉塊を中途半端に締めつけた。
膣の中が熱い液体で満ちる。半開きで喘ぐ唇から零れる唾液が彼の腹に垂れた。
「は、っ、や、だ・・・いやだァ・・・」
もう一度腰を揺り動かして快楽を感じて貰いたいと前にのめり込むようにすると、そのまま力が抜けて男の胸に倒れてしまった。
「すお・・・」
「お疲れ様。・・・あと1回だけさせてもらうね?」
「!・・・っつ、あッ」
尻を掴まれ柔肉を揉まれ、同時に腰がグイグイ押し付けられた。
より深く、最奥まで潜っては摩られ、激しく打たれ、彼女はひたすら男の名前を呼び続け、啼いた。
瞼の裏に、はじめて見たアダルトビデオの映像が表れる。滑稽な、淫猥な、生命に溢れた、吐き気を催すあれだ。手綱を失って暴走している姿だ。
「っ・・・あああ!」
彼女の内部が彼で満ちる。
強制されたものではない。望んだもの、欲しかったもので自分の「女」を見つけだせた。
注がれるものを愛しむ。朦朧とした頭で、萎えて引き抜かれた彼自身を撫でる。
「・・・周防くん、わたし、うれしいよ?だいてもらうのも、やきもちやいてくれるのも・・・うれしい。だから、困るとか、いわないで?わたし、かわいくなるから・・・すおうくんが好みっておもうように、・・・努力、するから。・・・だから、私、の、こと」
眼を合わせると、それ以上の言葉は出なくなった。背中に回された手と、触れるだけの優しい唇に、願望が昇華されるのを感じられた。
ぽとりと落ちた水滴は、胸の間を流れて絡まった脚に伝っていった。
Tシャツにジャージの格好で、薄暗い中本を読んでいる。
白っぽいカバーが目立つ。夜になったのに白色灯は点けず、ほの暗い橙の光の中で本の頁を捲っている。彼女は少し離れたテーブルで、少しずつゆっくりプリンを食べている。
何時の頃からか性行為の後の習慣になっていた。
外国人の著者名の哲学や自然科学の内容らしい。小難しい文章を追っている目を見つめる。これは、バランスのためなのか。今まで付き合った女の人との間でもこんな風だったのか、訊くに訊けない。
どれほど傍にいても求めきれない、侵すことのできない部分がある。けれどだからこそここにいられる。物分りのいい顔をしたいからではない、と、彼女自身に弁明する。ただ怖いからだ。
「周防くん、それ面白い?」
「ん?ううん。それほど面白いとは思わない。なんか要領を得ないし。俺バカだから」
「読んできかせて」
途中からでもいい?と訊く男に、何も考えないまま頷く。その時何故かふっと笑った。
彼女はプラスチックのスプーンを軽く噛んだ。
「『・・・私は逃げる。卑劣漢は逃亡した。強姦された少女のからだ。彼女は自分の体内に他の肉体が滑り込んでくるのを感じた」
どこまでも事務的な、感情を含まない声。思えば一番最初の、彼に惹かれる要因になったのはこの低いのにきれいな声だったのだと思う。
「・・・私のうしろにある、私のズボンの中で掻く、掻く、掻く、少女の泥まみれの指を引っ張る、泥水からでてきた私の指の上の泥、指は静かにまた落ちる、指はぐったりした。卑劣漢に頸をしめられた少女の指を前よりも弱く掻いた、少女の指は泥を掻いた、大地を前よりも弱く掻いた、指が静かに滑る、頭が最初に落ち、私の腿を暖かく転がって愛撫する。実存は柔らかく、転がり、揺れる、私は家々の間で揺れる、私は在る、私は実存する、われ思うゆえにわれ揺れる。私は在る。実存は地位を失った失墜だ、地位は失われないだろう、失うだろう、指が開口部を掻く、実存は不完全なもの。紳士。立派な紳士は実存する。紳士は自分が実存することを感じている。いや、傲慢で昼顔科植物のようにふわふわした、道をゆく立派な紳士は自分が実存することを感じない』」
そこで言葉が切れた。
彼は手招きをした。
「プリン、もらってもいい?」
「え?・・・うん。でも、あと少ししか残ってない」
「いいから」
数時間前まで少女を拘束していた黒いソファに本を投げた。プリンの容器を差し出す手を強引に自分の胸元に引き寄せる。――あ、と、発しかけた唇が塞がれる。舌が絡む。全て予定調和。それが、とても心地よい。
いつか誰かに密告される恐ろしさを絡みつけて、唾液を飲み込む音を聞き、咽喉仏にそっと指先で触れてみた。蟻力神
彼そのものの形に、触れた気がした。
【日記の最新記事】

