顔を上げれば、いつもの顔。
渋面を作った年下の――といってもほんの数ヶ月だけの差。学年は一緒だ――従弟が近くに寄ってきていた。
また別れてきたのか。 彼はいつも付き合っていた彼女と別れるたび、あの表情をしてここに来るのだ。いい加減表情を見るだけでわかるようになってしまった。
全くご精の出ることで。
お付き合いなんて面倒だと思うのに、彼は飽きずに彼女をころころ変えつつ女と遊び歩いている。早ければ半日。長くても数ヶ月単位で切り替わる彼女達。
もっときっちり一ヶ月とか一週間とか決まっているならカレンダー代わりになるのに、と思ってしまう。
見習いたいなんて思わないけれど、少し感心する。
私は、特に彼氏が欲しいと思ったことは今までないし、それで特に困った覚えもない。滋養強壮
きっと、彼の女遊びは一種の病気なんだろうなと私は思う。
誰かが傍にいないと、きっと耐えられないのだろう。
だから、こうして彼女と別れると、彼はここに来る。人を求めて。
私は本を閉じると座っていた位置を少しずらして、彼のために場所を空けてやった。
今日はもう本を読む時間はないだろうな、と思いながら。
「また、泣かしたの?」
「初めにいってあったのに、約束を破るあいつが悪い。」
「ずいぶん勝手よねぇ。あんたってば相変わらずなんだから。」
少しくらい許してやればいいのに。
彼は約束を破られるというのを異常なまでに嫌う。環境を考えるとそれはわからないでもないのだが、少し度を越しすぎていると思うのは気のせいではないだろう。
「俺はちゃんと言った。お前のことを一番に考えてやれないし、好きになれるかもわからない。それでもいいかって。」
「それで、彼女はそれでもいいと言ってたのね?」
いいと言っていた、つまり今は違うことを言われたんだろうという意味を含めてあの子を見ると、彼は頷いた。
「自分だけを見て欲しいとか、好きになってくれとか言ってきたんだ。――約束したのに。」
彼女にとっては約束ではなかったのだろう。
その時は違っても、彼に好きになってもらえる自信があったに違いない。だから頷いたのだ。彼にとっての『約束』であるというのも知らずに。
そうして、『約束を違え』て、彼に別れの言葉を告げられたのだろう、多分ついさっき。
今その彼女は泣いてるだろうか?怒ってるのだろうか?
彼の表情を見た限り前者かな、と思う。怒っていたのなら、むしろせいせいした顔をしていそうだ。
元々冷たく整った顔立ちの口元の辺りが少し歪み、眉間に皺がよっていた。
やれやれ。可愛い女の子の泣き顔でいらだつなんて女好き――傍から見れば――の風上にも置けない。
まぁ、小さい子がどんなに可愛くても、鳴き声が煩く感じるのと同じようなものなのだろうか。強精剤
「――皺ができるよ。」
彼の眉間を撫でるように指を滑らせた。不機嫌な時の彼を触っても怒られないのは私だけの特権だ。
それが、少しだけ嬉しいと思っているのはここだけの秘密。
なんだかんだでしょうがないとは思っていても、可愛い弟のように思っている。ひょっとすると私にはブラコンの素質があるのかもしれない。
彼は従弟であって弟ではないけれど、似たようなものだろう。
「せっかくあんた綺麗な顔してるんだから。もう少し大切にしなさいよ。」
このご面相だからとっかえひっかえしていても女の子が寄ってくるのだろう。
人間外見だといいたくはないが、しかし見た目で得することが多いのも事実。眉間に皺なんてよっていたら、そのうち彼をもてはやす女の子達もよってきてくれなくなるのではあるまいか。
「香乃姉(こうのねぇ)・・・」
「何よ、聞いてるの?」
せっかく忠告してあげているのに、忠告損は勘弁して欲しい。
「聞いてる。・・・ねぇ。」
「・・・・・・・またなの?」
私より背が高いはずの彼が少し身を丸めて、こちらを伺うように上目遣いでこちらを見た。
甘えるような媚びるようなそんな仕草で。
ため息をついた。呆れた為ではなく、諦めを込めて。
ああ、私も大概彼に甘い。
本当のことを言えば、彼のためにも自分のためにも断るべきだとはわかっているのだが、どうにも彼のこの視線に弱い。
小さい頃、実の母親に捨てられた彼の姿が重なる。
「この女好き。」
「そういうわけじゃない。・・・ただ、安心するんだ。」
お願い、と彼は私に請う。不機嫌で近寄りがたい印象は拭い去られ、どこかほっておけない弱弱しさを漂わせながら。
「今回だけだよ?」
「・・・・・・・。」
私は何度となく繰り返した「今回だけ」の言葉をまたしても沈黙で返された。今回だけだ、に対して彼が頷けばそれは『約束』になってしまうから、彼は何度繰り返しても頷こうとしない。
ああ、ため息が出る。――彼を拒否できない自分の弱さに。
「しょうがないなぁ・・・いいよ。おいで。」
私は上半身を後ろに倒して、横たわる。
直ぐに彼の重みがのしかかってきた。背中にあるのはスプリングの利いたわたしのベッドだから痛くはないけれど、重い。
そっと確かめるように彼の腕が私の体に回り、少しづつ少しづつ身に着けていたものが剥がされていく。
露になっていく白い肌を、まるで他人事のように私は見ていた。
何回繰り返しただろう?こういうことを。――もう数えるのはやめてしまった。精力剤
初めて彼とこういうことになったのは何年前だったか。
2年か、3年前だろうか?
その頃は女遊びなどしていなかった彼だが、代わりに物凄く精神的に不安定で。私は人を一人支えられるほど精神的に成熟しているわけでも、強くもないから、代わりに身を投げ出した。一種の安定剤代わりに。
何回か彼を慰めているうちに立ち直ったように見えたので、もう大丈夫だろうと手放してみたら――いつの間にか女の子達と遊ぶようになっていた。それでも表面上は大丈夫そうに見えたから放って置いたのだが、ある日、彼はこうして私の前に来て言った。
「彼女と別れた」と。
そうして今みたいに希った。その時了承してしまった私が悪いのか。以来彼は『彼女』と別れるたびに私の元に来る。
私の体を抱き枕か何かと勘違いしているのだろうか?それともやっぱり安定剤か何かだろうか。
彼は優しく大事なものを触れるように触れる。あんまり優しくされると勘違いしてしまいそうになるから、抱き枕だと思っているのなら、もっとそれなりの態度を示して欲しい。
「気持ちいい?」
「・・・ぅ・・・ん・・・。」
彼のくれる蕩けるような感覚は好きだ。気持ちいい。
甘さに酔って、意識が遠くなるような、そんな快感が身の内を走る。
「もっと気持ちよくなっていいよ。」
彼の愛撫は本当に絶妙で。
自分本位でことを進めることもなく、相手の快感を追及してくれる。かといって押しが弱いということもなく。
ちょうどいい具合。
「ん・・・ぁ・・・・ふ・・・・も・・・ダメ・・・」
私が音を上げるとふんわりと笑った。体勢を変えて、体を重ねてくる。
彼と私は一つになった。
きっと、明日には彼には又新しい彼女ができているのだろう。
でも、きっと暫くしたら別れて、またこうして私と彼は抱き合っているのだろう。
彼が私を必要としなくなるその時まで。
愛なのか同情なのか憐憫なのかよくわからない、複雑な感情を胸に抱きながら、急速な眠気に襲われて私は眠りに付いた。男根増長素
だから。
「後、何回この手を使えるかな?」
という彼の呟きは耳に届かなかった。
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