2009年03月25日

彼次第

今日はあたしの18年かけての勝負の日。池田光憲――あいつに。気持ちを確かめる。あたしは新たな決意を胸に、チャイムのボタンを押す。まもなくしてガチャガチャと鍵を外す音。ドアが開かれ、現れたのは身長180センチの男。まあ、あたしが172センチあるから、身長差は10センチもない。だけど、こうしてみるとやっぱりデカい。彼の目元には変わらず愛用している黒ぶちの眼鏡。こいつの名前は光憲――あたしの初めての彼氏だったりする。彼は開口一番に言い放った。「相変わらず、時間に律儀な奴だなぁ」「それって褒め言葉に聞こえないんだけど?」「いや。よく迷わなかったな、って。感心したところ」「・・・あ、そ」呆れた。時間を守るは当たり前のことでしょ。住所なんて地図見ればすぐに分かるじゃない。天仙丸1号

「とにかく、あがれよ。一通り片付け終わったところだから」「ん。お邪魔します」あたしは門をくぐり抜け、玄関の前に立つ。ちょうど横にいた彼は訝しげにあたしの姿を見下ろす。「何?何かついてる?」「・・・別に?あんま最近、スカート見てなかったなって」「よくそんなこと憶えてるわね」「・・・まぁとにかく上がれって。今、なんか出すからさ」彼の言葉に甘えて、ブーツを脱ぎスリッパを履く。続いて彼もスリッパに履き替えて、階段を上る。あたしは光憲の後ろに続いて、二階の突き当たり西の部屋に入る。初めて入った印象は、閑散とした部屋だった。無機質というか、冷たいというか、温かい色のない部屋。だけど広くて嫌にスッキリとした部屋。光憲がいつも暮らしている空間に今、いる。共有する空気。・・・・・・不思議な感じ。あたしは、しばらく部屋を見渡していた視線を彼へと向ける。大敗毒

「ああ、適当にその辺に座れよ」すっと指さされたのは白いソファ。心なしかうちのより大きく見える。だが彼の身長を考えれば納得がいく。そう自分に言い聞かせ、言われたとおりに窓の下にあるソファに座る。持っていたミニバッグを左横に置かせてもらうことにした。それから両手を横に置いて、彼を見上げる。「・・・座んないの?「なんか飲み物でも持ってくるよ」彼は踵を返し、部屋から出て行く。あたしは特に引き止めることはせず、その背中を見送った。パタン、と閉じられるドア。あたしは手持ち無沙汰になってバッグから携帯電話を取り出す。ふと液晶画面に目線を落とすと、メール着信ありの表示。・・・・だれだろ?

不思議に思いつつ、ピンクの物体を開く。3回ぴこぴことボタンを押し、受信メールフォルダを見つける。すると友達の恵子からのものだと分かった。指定して開くと、いつもの見慣れた文章の羅列が出てきた。たまにギャル文字が混ざるそれを要約すると、『さっき美容院行ってスッキリ切ってもらった』という報告。確か彼女は来月に推薦を受ける予定だった気が。・・・・ああ、それで。返信しようかと僅かに迷ったが、まぁ後でもいいか、と二つ折りのそれを閉じた。そのとき、階段を上ってくる足音が聞こえた。それは確実にこちらに近づいてきていた。あたしは立ち上がり、ドアの前まで駆け寄った。そして、ゆっくりとドアノブを開ける。すると案の定、目の前にはお盆にジュースを載せた彼がいた。魔根金虫草カプセル

「サンキュ」「イエイエ。どういたしまして」適当に笑みを浮かべ、彼を通してからドアを閉める。背後から聞こえるカタン、と置かれる音。振り向くと、彼が持ってきたそれらをソファの前にある机に置いていた。あたしが近づくと、光憲はどっかり腰を下ろした。「炭酸大丈夫だったよな、美咲」あたしは彼の左横に腰を下ろす。「うん。平気」「そっか」返事を聞くや否や、彼はペットボトルからそれぞれコップに注ぎいれる。そしてハイ、と渡された。「ありがと」あたしは早速オレンジ色をした飲み物を口にする。だけど、彼はそれには口につけず立ち上がり、勉強机のほうへ歩いていく。その光景を大人しく見やっていると、彼が机の隣にあるMDデッキの前で何やらがさごさしていた。

「・・・曲、何でもいい?」「うん」そうして流れ出した曲はあたしの知らない洋楽だった。ふぅん、こういうのを聴くんだ。彼はいつの間にか隣に戻っていて、ファンタを飲んでいた。あたしはそれが飲み終わるのを待ってから、切り出した。「ねえ、ノリ。あたしのこと好きじゃなかったんだよね?」「・・・は?どしたの、美咲」ことん、と置くグラスの音。けれど、あたしは彼の顔が変わるのを見逃すかとばかりに見つめる。「どうもしないよ。思ったことを率直に言っただけ」「ふーん」何にも思っていない、といった口調。そして彼は無造作に眼鏡をはずし、丁寧にレンズを拭く。不自然さのない、いつもの彼の行動。だが。ちょっと、そーゆー態度をとるわけ?それならこっちにだってそれ相応の・・・・。三体牛鞭--三體牛鞭

そう思った、とき。彼は拭き終わった眼鏡を机の上に置いて、ゆっくりとこっちを見た。真っ直ぐに視線が交わり、お互いの顔が瞳に映し出される。だけど、あたしは奇妙な金縛りにかかっていた。なに、この視線。離せない。・・・・・どうして。彼が目線をずらさない限り、こちらもずらせない。動くことが、できない。・・・・・どうして。同じ疑問をもう一度、心の中で繰り返す。両者の間に流れる長い沈黙。あたしはついに息が切れ掛かっていた。呼吸の仕方が、分からなくなっていて。もうギブアップしたい衝動に襲われていた。すると。急に視界が暗くなった。ああ、もう意識を手放すことになっちゃったんだ。けど、それは違った。息が入ってきた。唇から。

それは、つまり――――っっ?!!何をされたのか認識ができるときには、それはもう離れていた。目の前には変わらずいる、彼。そのとき、あたしは息の仕方は思い出した。じゃなくて。「なに、するのよ」「さぁ?自分の胸に聞いてみれば」「・・・っ、ちょっ・・・!」今度は顎をつかまれて拘束される。それからすぐに降りかかってくる甘い囁き。「嫌なの?」耳元で囁くのはやめてほしい。背筋に悪寒がわずかに走ったじゃないの。しかし、それを彼に伝える前に。再び口を塞がれた。かすかに触れる彼の体温。・・・温かい・・・。当たり前だけど。そう思っていると、ふと気が付いた。・・・・・ちょっと長くない? これ。思ってみるとその通りで、長い接吻を交わしていた。超強 黒倍王「・・・・・・・・・。・・・・・んーっ!」なかなか離してくれない彼に抗議の声をあげる。すると、しばらくしてゆっくりと離された。けれど、長い余韻が唇に残っていた。何となしに上目遣いで彼を見上げる。

「・・・息切れしてんぞ」誰のせいよ。ていうか、なんでノリは何ともないわけ?――・・・ああ、慣れてるからか。そんな考えに耽っていたら、抱きすくめられた。「美咲が言いたいことは何となく分かる」「・・・・・・あっそう、言ってみなさいよ」「イヤだ。癪じゃん、そういうの」「なんで」そう言うと、今まで見えなかったノリの顔が正面に来て。彼には珍しく、顔を少し歪ませていた。「・・・それはこっちが聞きたい台詞。いきなりどうしたわけ、何かあった?」「何にも」「嘘。バレバレだって、美咲。隠し事苦手なんだから、すぐ顔に出るよ」む。いいわよ、そっちがその気だったら。こっちだって、もーヤケよっ!天宝五夜神カプセル

「あたしのこと嫌いなんでしょ?なんでこういうことするの?」「こういうことって、どういうこと?」「賭けで負けたから、あたしに声掛けて。それで付き合ってるんでしょ?あたしたち」あたしは一気にまくし立てた。その言葉にやや動揺が隠せない彼。それからぽつりと呟くように声が聞こえてきた。「靖に聞いたんだ」「弁解・・・できないよね。事実なんだもの」「・・・・・・・・。なんで『嫌い』って、そう言えるの?」あたしを見下ろす挑戦的な視線。だけど、あたしだって怯むかと彼の瞳を射る。「隣にいたら分かるわ。ノリは別にあたしが好きで一緒に居るんじゃない。そーゆー雰囲気なら敏感だもの」「へえ。・・・雰囲気、ね」「それにあたしを女として見てないでしょ?ただのじゃれてくる子供の扱いと同じでしょ?」「・・・違うよ」「キスだって今のが初めてで。いつだって、あたしに触れようとはしなかった」「・・・・・・・・・美咲はどうしたいの?別れたい?」三金桂林西瓜霜

「・・・・・・・・・美咲はどうしたいの?別れたい?」そういう彼の表情は、怒っているとも悲しんでるともどちらとも取れなかった。あたしは彼の思いが掴めず、どうしたらいいか分からなくなっていた。ただ呆然とするしかできず、彼の言葉を頭の中で反芻していた。――別レル?――誰ト?それからようやく意味を理解して我に返った。あたしは。別れたいのかな・・・この人と。だけどすぐに違うと頭を振るう。そうじゃない。あたしはね、光憲。「あたしが嫌い、って肯定して」「美咲、言っていること目茶目茶・・・」「言ってよ。だって、光憲はそう思っているんだから。簡単でしょ?」そう、これは簡単なこと。だけどフト思った。これってただの自己満足のためなのかなって。だとしたらあたしは冷静な彼の目からどんなに愚かに、馬鹿に映っているんだろう。そう思うと、なんだか悲しくなった。あたしは居たたまれなくなって彼から目を逸らし、俯いた。すると、すぐに低い声が聞こえた。

「それ、さ。何の誘導尋問?」ゆっくりと尋ねる声は落ち着いていた。が、あたしの癇に障るのは十分な言葉だった。ユウドウジンモン?何よそれ。あたしを馬鹿にしているの?本気じゃないって、冗談だって思っているわけ?!・・・いいわよ、勝手にそう思っていれば!「もういい。これ以上、まともに話せそうにないしね。あたし・・・帰る」「待てよ。自分から言い出しておいて逃げる気?それって卑怯じゃないの?なあ、美咲。これから他の男のところに行かれたら俺、どうにかなる。頼むから、行くなよ。俺の前からいなくなるな」それがさっき人を小ばかにした人がいう台詞?そんなの、冗談じゃないわよ。こっちがどれだけ勇気出して言ったと思っているわけ?徳国相思露

「嘘ばっかり。光憲はあたしの存在なんてどうでもいいって思ってる」「思ってない」「あたし帰るから。・・・さよなら!」あたしは今度こそ踵を返し、隣のカバンを持って立ち上がる。けれど、それより早く彼が動いてあたしの前に立ちふさがっていた。流石に自分より高く力のある男に勝てるとは思えない。あたしは最後の抵抗とばかりに彼を睨みつけた。でも、それに効果が生まれることもなく。彼は自嘲気味に微笑んで、苦々しく言った。「おとなしく帰すって思ってた?美咲」いかにも怒っていますという彼の迫力に、無意識に後ろへ逃げようとする。だけど、あたしの行動なんてお見通しとでもいうかのようにすぐに右手首を捕まえられていた。あたしは声を震わせながら必死に抵抗を試みる。

「今だって思ってるわよ。そんなハッタリ通じない」「へぇ。体に分からせないとダメみたいだな。もうどうなっても知らないから」そう言うや否や、両肩を押さえつけられ、そのまま二人一緒に後方へ倒れこむ。ボサッと音とともにソファに体が埋まる。目の前には、無表情の光憲の顔。あたしはようやく事の事態に気付き、慌てて声を出す。「・・・やっ!止めてよ、この万年発情期男!」「は?俺、美咲に触れるのこれが初めてのはずだけど?もしかして、既に誰かに頂かれちゃってるとか、そーゆーこと?」なんで恥ずかしいことを平然と言えるんだ、この男は。そんな思いを込めて、彼を軽く睨む。だけど。何も言わなかったのがあたしの状況をさらに悪くした。徳国相思露 液体媚薬

「否定しないんだ、俺の彼女は」「もう彼女なんかじゃ・・・っ」「いつの間に別れたの。美咲。俺は認めてないけど」もう後ろへ逃げることはできないっていうのに、彼はにじり寄る。距離という距離がどんどん狭まり、鼻の先がくっつきそうなぐらいになっていた。あたしはこれ以上ないというぐらい心音が高鳴っていた。こ、こんな至近距離で見つめるなんて非常識よぉ!そんな思いは彼には伝わらないらしく、そのままの距離を保ったまま、光憲は口を開く。「で?どうなの?・・・美咲」「どうだっていいじゃないっ!」「・・・・・・怒るよ?結構、俺にとって重要なことなんだけど」彼の瞳に射すくめられ、あたしは何もできないでいた。言葉は喉に詰まり、動きは彼に封じ込められ、瞬きさえもその瞳に吸い取られる。東方神龍

「で、どうなの?」再びの問いかけ。あたしは最早逆らうことができなかった。だけど素直に言うのは・・・やっぱり悔しいわけで。左右に首を振るのにとどめて置いた。すると、こちらが拍子抜けするぐらい彼は顔をほこばせて。子供みたいに無邪気な笑顔を浮かべていた。・・・・・あたしはさっきの不毛なやり取りを繰り返すことができなくなっていた。その、顔のせいで。何も言えなくなっていた。そうしていると彼はゆっくりと身を起こした。あたしは上にかぶさっていた重みがなくなったことでようやくそのことに気付き、起き上がる。彼はすぐさまにあたしの視線を捉えて、口を開いた。こっちが何か言うまで何も言わないと思っていたばかりに、思わず息を呑む。「俺ね」「・・・・・・・」「美咲のことずっと前から・・・好きだったよ。あいつらが賭けに美咲を名指ししたのはそれを知ってたからだよ。それから本当に付き合うことになったときは正直、夢心地だった。ずっと・・・そんな感覚だった」あたしは何を言われているのか理解が追いつかず、呆然と聞いていた。だって、ホントに予想外のことだったから。ノリは呆けているあたしに構わず喋り続ける。旗人減肥套盒

「美咲はただ何となく俺に付き合ってて。だから俺の好きのほうが大きくって、それを美咲にぶつけたら離れていくんじゃないかって思ってた」そうして、ゆっくりとこっちを見た。その顔はどこか悲しそうで。なんでかは分からないけど。でも、やっぱりあたしが原因なんだろうなって思った。そう考えると、彼にかけるべき言葉が思いつかなかった。「・・・・・・・」「ほら、何か言えって」「嘘吐き」「・・・どこが?」「そんなの聞いてないっ」「当たり前だろ。今、言ったんだから」ノリは鼻を軽くこすり、目線を宙に向ける。そんな恥ずかしさを隠そうとする素振りに、あたしは内心微笑んでいた。けれど次の瞬間、あることに気が付いた。

「じゃあ、どうしてあたしに触れようとしなかったの?」「お前の体を俺の汚れた手で穢れさせたくなかったんだよ」「・・・・・・・はァ?何言ってるか、いまいち分からないんだけど」「ともかく、そういうこと。・・・分かった?」「分かるわけないでしょ!」だが、彼はその場の雰囲気に似つかわしくない満面の笑みを浮かべていた。あたしは第六感で逃げ腰になる。けれど、彼がそれを逃がすはずはなく。既に再び腕を拘束されていた。笑みだけはそのまま顔に張り付いたまま。「美咲ならそう言ってくれると思った」「・・・な。・・・えッ」押し倒される。すぐに上にのしかかって来る重み。あたしは急に危機感を覚えて、おもむろにうろたえる。だけど、至近距離にいる彼はとても嬉しそうな表情で。徳国 増大宝

「平気だって。痛いことしないし。体に直接分からせてあげるから、美咲はそのまま何にもしてなくていいよ」「・・・・・・ちょっと。誰が大人しく頂かれるって言った?」「俺?」その自信過剰なところ、直して欲しい・・・かも。あたしは無意識に腕を伸ばして、彼の頭を両手で包み込む。光憲は軽く目を見張った後、しずかに睫毛を伏せた。長い睫毛をあたしはのんびりと眺めていた。そうして彼はやんわりとあたしの腕をはずし、むくりと起き上がった。それから、下に敷かれたあたしの体を器用に避けてソファの端に座った。と、不意に大きな溜息が聞こえた。そして、彼はゆっくりとあたしを振り返った。

「・・・・・・やっぱ美咲って、俺に抑制かけるタイプだな。はぁ、・・・ごめん悪乗りしすぎた。起き上がれる?」「ん、平気」「先に断っておくけど、今度は絶対譲らないから。覚悟だけはしといて」「・・・は? 何を譲るわけ?」「執行権」「・・・・・・」やっぱり彼には敵わないな、と思った。そう思うと自然に笑みがこぼれてきて、それを目ざとく見つけたノリが言った。「あ、今笑ったな?」「だって可笑しい。やっぱりノリはノリなんだもん。それを改めて思うと、ちょっとね。・・・幸せだなって思ったの」「・・・そっか。まぁいいけど、今月中には頂く予定だから覚悟しといて」「面と向かってそんなこと言わないでよ」「いいじゃん、先約先約」そう言う横顔は晴れ晴れとしていて、あたしはノリさえ止めなかったら別に良かったんだけどなって頭の片隅で思った。でもまぁ焦ることでもないし、今すぐに求められても困ってたんだけど。とにかくこの言葉に限るでしょ、――あたしの心は『彼次第』。泣かすのも、嬉しくさせるのも、幸せにしてくれるのも、光憲次第。増大宝V12

俺の彼女は強気で負けず嫌いで正直な話、扱いに困ることもしばしば。それでも隣にいると決めた理由は勿論――惚れた弱みというヤツなんだろう。神辺美咲、現在付き合っている俺の彼女の名前だ。美咲と付き合い始めて早何ヶ月……俺には珍しく清い関係を保ったままの順調な付き合いが続いてる。まぁ偶に変に勘ぐった美咲から「別れる宣言」をされたりすることもあって、それでも何とか宥めて美咲の不安を取り除くのに必死になったりもしているが。それでも俺たちの間柄は、一応「順調」な関係のはずだ。しかし、今の俺は幸せ絶頂の只中には少し離れたところにいる。原因なんて考えるまでもない。なぜこうなってしまったのか甚だ謎な、靖司の提案で決まってしまったダブルデート。てっきり断るとばかりに思っていた美咲はあっけなく承諾した。その横にいた俺は一人自問自答する羽目になっていたのだが、袖をぐいと引っ張られて挙句、目を輝かせ「どこ行こっか?」と言われた日には内心理性との限界も致し方ない。……というよりも、これ以上至近距離で見つめることはできる限り止めて欲しいというのが切実な願いだ。栄昌肛泰

なのに、だ。なぜかこういう時に限って、美咲はいつにも増してベタベタと俺にくっついてくる。こっちの気持ちも少しは理解してくれよ、と思うのは無理な要望だっていうのは百も承知なのだが、どうしたって心の呟きは止むことはない。果たして今の俺は表面上、楽しくしているよう見えるのだろうか。そんな疑問すら考えてしまうのだから、俺は今相当追い詰められていることに間違いはないだろう。「あー……」つい出た、独り言。靖司たちは絶叫マシーンが大好きなカップルだから同系統に立て続けに連れ回され、途中から俺の提案でもっと落ち着くコースにしようと美咲を連れ立って逃げてきた。少しぐらい放っておいたって、どうせ気付かないだろうしな。午前中からずっと叫びっぱなしだったんだから、少しは休憩させろっていうのも立派な理由になるだろう?それに折角来たんだから、美咲ともいい思い出を作ったって罰は当たらないはずだ。しかし俺の溜息のせいで美咲は心配そうな顔を向けていた。 杞菊地黄丸

「どうかした?あ、喉乾かない?何か買ってこようか?」「……いや。いいよ、俺が買ってくるから美咲はここで待ってな」そうして絡み付いていた腕をそっと解くと、一瞬切なそうな美咲の顔が目に入ってしまった。そんなに離れるのが嫌なのか、とも思うが美咲の性格上そんなにベタベタするのは好きじゃないはず。……あくまで俺の推測だが。それでも自分から言った建前、自販機方面に行かないわけにもいかず。俺は自分にそう言い訳をしながら美咲の元から離れる。さて、後でどう心境を探ろうか。内心次なる対策を考えながら、広場へと辿り着く。だがそこには既に先客が数人いた。仕方なく彼女たちが過ぎるまで待つかと少し離れているところで突っ立っていると、グループの中の一人が俺に気が付いたらしくおもむろに目が合う。天仙丸7号

「あれ?池田…先輩ですよね?」「は?」「ああそうだ、やっぱり!偶然ですね、こんなところで」言いながら、なぜか俺の傍まで近寄ってくる女の子に見覚えは……あっただろうか。離れていてもハッキリと聞こえる声、女の子らしい可愛い顔立ち。……うーむ。「ごめん、誰だっけ」「女子バスのマネージャーしてます。菅田です」なるほどね、それで俺のことも知ってるわけ。ようやく合点がいき、一人納得する。「あぁ……それで」「先輩、良ければ一緒にあたしたちと回りません?」聞き間違いか、これは。そう思って菅田さんの顔を見るが、冗談でもない様子だ。俺は頭を抱えたい心境で、「待って。……意味が分からない。どうして君と一緒に遊ばないといけないわけ?」落ち着きを払いながら言うと、菅田さんは不思議そうに目を丸くした。

「そんなの決まってるじゃないですか。あたしが先輩のことを好きだからですよ。絶対今の彼女なんかより、得ですって。何なら二股でもあたしは全然」「……いい加減にしろ。得とか損とかそういう事で誰かと付き合うつもりはない。一緒にいたいから一緒にいる、それだけだ」何を言うかと思えば、……聞く耳を持とうとした俺が阿呆だった。これはもう普通な会話にはならない。俺はその場から離れるために背を向ける。けれども、諦めが悪いのか背中越しにソプラノの声が聞こえてくる。「でも…でもあたしだったら、先輩が悲しそうにしてるときに一緒にいます!今の彼女は先輩の心境なんか全然分かってない!!分かろうともしてない!そんな彼女じゃ、幸せにさせることなんてできないでしょう?!」天仙丸3号

最後は最早、捨て台詞とも取れるような口ぶり。心の中で大きい溜息をつき、俺はもう二度と振り返らないことを決意してそのまま立ち去った。後ろから彼女の友達の声がしたような気はしたが、ヒステリックを起こされたってこっちが迷惑ってもンだ。俺だってそこまでお人好しじゃない。第一、今は大事な彼女とここに遊びに来ているわけで……。そこでようやく俺はまた気付くのが遅かったことを悟った。気が付けば、ベンチから立ったままの美咲が顔を歪まして俺を見ていたからだ。その複雑そうな表情は、明らかに今のやり取りを見ていたという証拠。さて……何て言うべきか。けれど逃げるわけにもいかない。腹を括ろうと自分に言い聞かせ、美咲の前へ立つ。だが美咲の方が先に口を開いていた。

「可愛い子ね。いっそ乗り換えたら?」「……美咲。そんなに俺がいなくて寂しかったんだ?」「違うわよ、率直な感想を述べただけ」明らかに拗ねていると見て取れる分かりやすい行動に、俺は内心苦笑いを浮かべる。理由は勿論、これから俺が取る行動に対して、だが。「じゃあそうなることが美咲の望みな訳なんだ?俺が横にいなくなることが。そうだとすれば、そうするけど」「……ちがっ」本当に美咲は相変わらずだ。そろそろ俺の手を読むこともできるだろうに。どうしていつも、同じように俺の策にこうもあっさりと嵌まるのか。まぁそこが可愛いところと言えばそうなんだけど。じゃあ、ここは更に素直になって貰うとするか。俺は美咲の腕を軽く手前に引っ張り、体勢を崩しかけた美咲の体を引き寄せて耳元で囁く。天仙丸6号

「じゃあ、さっきのは言葉のあやってこと?」みるみるうちに、美咲の頬が薔薇色に染まっていく姿につい抱きしめる腕に力を込めてしまう。すると美咲が遠慮がちに俺の胸に両手を当て、上目遣いで見上げてきた。「だ、……だから」「うん。なに?」「悔しかったのよ、ちょっとだけ」その言葉に思考が一時停止する。美咲はこういう時は決まっていつも予期せぬ言葉を投げてくるが、まさかこう返してくるとは思わなかった。肝心なときに急に女の子らしく、しおらしくなってみろ。愛しさが込み上げてきたって無理はないだろ?……ていうか、ここが家だったと思う自分に苦笑いを禁じえない。俺は長い溜息を心の中でつくが、腕の中にいた美咲がかすかに身じろぎをしているのに気付き、反射的に腕の力を緩める。けれど、次の言葉で俺の力が強くて苦しかったわけではないことが明らかとなった。

「光憲ぃ、何いちゃついてンの?」……ったくお前には配慮って言葉が存在しないのか?いや違うな、単に俺をからかって遊びたいだけだな、靖司の場合。俺は美咲を解放し、ご丁寧に水を差してくれた友人へ“ささやかな御礼”を試みる。「お前、人の事言えるのか?一週間前、クラスの連中の目も憚らず、堂々とキスしてたくせに」「ば…っ、あれは違うだろ!!だいたいあれはっ、光憲が変な噂を流すから彼女がよその男になびいちまって、それを取り返しただけだろ!」「だからって普通、人の目ぐらい気にするよな?彼女、あれからからかわれて大変だったって聞いた。……そうだったろ?」最後の同意は、靖司の彼女へと向けたもの。美咲の幼馴染でもある未樹が顔を赤らました状態で深く頷くのを確認し、靖司に向き直る。天然山羊の眼

「ほら、どこをどう見たって、あれは場所を選ぶべきだろ?まぁお蔭でもう誰かに奪われる可能性は減っただろうけどな」「……うるせーよ」「ところで、これからどうする?もう粗方回ったんじゃないのか?」俺は全員を見回すと、皆が悩み始めていた。かくいう俺もそろそろ他の場所に移すか、それとも家へ帰るかのどちらかでいいかと考えていた。けれど静寂を破る一声によって考えは一時中断された。「あたし、行きたいところがあるんだけど」と遠慮がちに提案したのは美咲だった。美咲の横にいた未樹は少し驚いた素振りを見せつつも、すぐに瞳を輝かして言う。

「いいじゃん、なら行こうよ。それで美咲、行きたいところってどこなの?」「んとね、未樹。ここからすぐのモールに美味しいケーキがあるの。久しぶりに行きたいなって。あとちょっと買い物もしたいし」「じゃあ時間もいい頃だし、行こうよ。ね、いいでしょ?」既に男サイドには異論は唱えられない雰囲気となっていた。「ああ、じゃあそうしよーぜ」靖司の了承で、場所を移して電車の中。彼女二人はドアすぐ横の座席で楽しく喋りに耽っていて、その光景を俺らは遠めから眺めていた。その楽しそうな笑顔を見ているとつい、俺は知らず呟いていた。痩身の語 第三代

「……なぁ靖。どうやら俺、避けられているようなんだけど」「どうせ自業自得なんだろー?」「なんかお前に言われると腹立つな」「じゃあ、違うワケ?今度は完璧非がないって言い切れる口か?」「……いつからそう頭が回るようになったんだよ、痛いところつきやがって」俺が項垂れる羽目になるとは、いつもと逆の光景だ。それが非常に悔しい。とは言っても、今回ばかりは流石に落ち込んでいるから靖に反撃をする気力も最早ない。美咲の提案の後、出口を目指した俺たちはバスへ乗り込んだ。俺は美咲の横に立つと、彼女はあからさまに避けるように違う場所へとわざわざ移動していた。その理由なんて一つしかないからこそ、頭が痛い。そんな俺の苦悩を知らない靖は胸を張って断言した。「俺だって日々成長しているってことだよ。残念だったなあ、ノリ」「ふう。……しっかしまぁー、どうしたもんかねぇ」「女の子の考えることは分からないからなぁ」回りくどいことはどうにも苦手だ。俺たちは今までの苦い思い出から得た経験をしみじみと感じながら、お互い頷いていた。神奇女用催情口服液

「ケーキが……」「あたしたちのケーキが、売り切れだなんて……」「セールじゃあ仕方ないな」「他に美味しいものでも食べに行くか」女性陣の悲しい声に俺たちはそれぞれ慰めを試みる。「ここのが、美味しいって評判なの!だのに……はあ」「しょうがないよ、今度はちゃんと食べるんだから!ね?じゃあそうと決まったら買い物レッツゴー!」「う、うん……そうだね。うんそうしよっ」さすが友達だけあって要領を得ているなぁと軽く感心してしまう。だが。「あ、男子はテキトーその辺にいてよ。ちゃちゃっと終わらせてくるから」「ちゃちゃっとって……なぁ」「あーハイハイ。了解。いってらっしゃい」靖の言葉の先を読んだ俺は彼の口を封じ、美咲たちを笑顔で見送る。そうして女の子たちの姿が遠くなった頃、静かにしていた靖が暴れて俺の手から逃れる。蛇胆川貝枇杷膏

「だーっもう!!あいつらがちゃちゃっとで済む日なんて来るもんか!」「……お前、それをさっき言ったら絶対根に持たれるぞ。そのくらい読めよな。だからお前らは喧嘩が多いんだろ」「ば…っ、第一あれはちょっとしたすれ違いだ!」「ほー?すれ違い、ねぇ?」耳たぶが赤くなっていく靖にまだまだ子供だなあ、と俺は心の中で笑う。そんな他愛のないやり取りを何度かしているうちに、美咲と未樹が姿を現す。「おまたせー♪ほら彼氏諸君っ、くたばってないで帰るよー」未樹の言葉に俺たちは背中を預けていた踊り場から起き上がり、階段を降りる。靖司と未樹が並んで歩き出すと、自然と美咲も俺の横へ来た。その事実にもう怒ってないのかと安心しながら尋ねる。

「意外に早かったね?」「え?ああうん、買う物は殆ど決まってたから」「……で、何を買いに行ったの?」「女の子の秘密です」美咲は唇に人差し指を当て、楽しそうに笑っていた。けれどその中身については、その日の夜には明らかとなった。一同解散の後、美咲には未樹の家にお泊りという嘘をつかせ、そのまま俺の家に招いた。案外すんなりと承諾した美咲に若干驚きを隠せないが、どちらにせよ今夜独占できる事実は変わらない。だがまだ最後の確認事項がひとつある。一応の『確認』をしておかなければ、ならない。「美咲。心の準備はもうできた、んだよね?」顔を赤らめさせながらも頷く気配。俺は抱きしめたままの状態で首筋の紐を解く。そして手早く美咲の服を脱がすことに意識を集中させる。やがて、真新しい下着が目を釘付けにさせる。……買い物ってこれか、もしかしなくとも。善存片

「美咲、ブルー好き?」「……うん。濃い青ってきれいじゃない?」「よく似合ってるよ」さらさらの細い髪の毛を背中へ流し、露となった首筋へ口付ける。甘い誘惑にもう心は捕まって逃げられない。逃げるつもりも、逃がすつもりも、既にないけれど。「だから、もう待てないから」それだけを言うだけで精一杯だったんだから、俺もまだまだ子供なのかもしれない。はにかんだ笑顔にもう逆らえないと、俺はある確信をしていた。美咲次第で、俺の心は簡単に揺さぶられる……それだけ彼女に惚れているのだという事実を。善存多維元素片
posted by chinaseiryokuzai at 19:24| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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