そんな彼の名前は藤本悟。先週ファースト写真集が発売したばかり。さて、どういうわけかその藤本悟と同じ高校、同じ学年、同じクラス、しかも座席は隣同士、という恐ろしいほどの幸運に恵まれて、毎日苦しいほどのときめきを抱えて死にそうな日々を送っているのが、工藤都紀。写真集は三冊(観賞用、保存用、人にみせびらかす用)予約して買った、生粋のアイドルオタク。いや、藤本悟オタクである。――アイドルだとかそうじゃないとかもう関係ない。都紀は藤本悟が好きなんだ。魔根金虫草カプセル
夕日が赤く染めた空を、カラスが一声鳴いて飛んで行く。貯水槽の影に座り込み、優雅に午後のサボタージュを楽しんでいた都紀は、西に傾く太陽を見ながら、大きな伸びをした。さて、そろそろ帰りのホームルームも放課後の掃除も終わっただろうし、教室に置きっ放しの鞄を取りに行ってさっさと帰ろう。立ち上がり、校則をゆうにぶっちぎった色々な意味でぎりぎりの長さのスカートのプリーツを整える。足取りも軽く貯水槽から飛び出そうとひょっこり顔をのぞかせたが、夕日に包まれた屋上の柵の際に人影を見つけて引っ込んだ。とりあえず都紀の所見ではただいま告白の真っ最中。こちらに背を向けた小柄な――と言っても、比較的長身の部類に入る都紀からしてだが――女子生徒と、彼女と向き合う男子生徒。あいにく逆光なので彼がどんな人なのかはわからない。三体牛鞭--三體牛鞭
こんな状況で「はい、ちょっとごめんなさいよ」なんて出て行けるだろうか。いや行けない。青春真っ只中な二人を邪魔する権利なんて誰も持っていないのだから。というわけで、今は影の中でじっと息を潜めているのが大正解。断じて、野次馬根性というわけではない。本当だってば。「あ、あの、私、ずっと前からその……くんのことが好きで……それで、えっと……べ、べつに、つきあってほしいとか、そういうんじゃないんです。ただ、知ってほしかっただけで」ただ知って欲しいだけ。なんて奥ゆかしいことだ。おどおど言葉を続ける女子生徒に対して思ってしまう。さて、彼はどう返事をするのだろう。聞き耳を立てる。超強 黒倍王
「だ、だから、あの、ご、ごめんなさい! 忘れてください!」次の瞬間聞こえたのはかわいそうなくらい緊張しきった高い声。ちょっと待て、そんなタイミングでそんなこと言ったら、くっつくもんもくっつかないよ! と内心突っ込む暇もなく、コンクリートを蹴る小走りの足音。後には男子生徒だけが残ったようだ。「……」気まずい。恥ずかしいのはわかるけど、せめて返事くらいは聞いて帰って欲しい。そろりと顔を覗かせる。早く帰ってくれないかな。すると人の気配に彼がこちらを振り向いた。「――工藤さん?」「さ……ふ、ふじもとくん」意味もなく彼の名前を呼んで、都紀は気まずさに引きつり笑い。まさかこの人がここにいるとは思わなかった。「ど、どしたの。こんなところで」見とれてしまいそうに鮮やかに、悟は整った顔に苦笑を浮かべる。天宝五夜神カプセル
「ちょっと呼び出されたんだ。どうしよう、嫌なとこ見られちゃったかも」「えっと……見てない、から。大丈夫だよ」聞いたけど。「それにあたし、出版社に売ったりなんか絶対しないから!」「今時それぐらいじゃ出版社だって買わないよ」勢いで言うと、悟は少し表情を緩める。正真正銘の微笑みに今度こそ見とれた。「工藤さんって、やっぱりいい子だよね」「そう、かな……」いい子なんて言われ慣れてないから照れくさい。しかも発言者は好きなアイドルで片思いの相手だ。ニマニマしてしまうのをおさえられずにいると、悟が軽く首を傾げる。「どうかした?」「え、あ、な、なんでもない! なんでもないよ、藤本くん!」これじゃあ浮かれているのがばればれだ。何か話題を別のところに持っていかないと。三金桂林西瓜霜
「げ、芸能人って大変だよね。あ、ああいうことって、たくさんあるの」よりによって持っていった話題がそれか。「ああいうこと?」「その……告白されちゃったりとか」語尾がだんだんぼやけていく。ついあまり考えずに口に出してしまったが、これって気に障ったりとかしそうだ。嫌だな、気を悪くしたらどうしよう。小さくため息が聞こえた。「そういうファンレターも来るには来るかな。でも、直接言われたのははじめて」「へぇ……そうなんだ。なんか、意外」悟は屋上の柵にもたれかかって都紀へ視線を流す。この夕日が都紀の頬の色を上手にごまかしてくれますように。「どうして?」「なんか芸能人ってもっと、こう、激しい感じのがたくさん来るのかなーって」「全く無いってわけじゃないけどね。よっぽどひどいのは事務所で止めるみたいだし」思い出してうんざりしたのか視線を伏せる悟に慌てた。徳国相思露
「ご、ごめん、変なこと聞いた。芸能人ってやっぱり大変だよね」悟はゆるゆると首を振った。「工藤さんが謝ることじゃないよ。大変なのは否定しないけど」「……やっぱり?」芸能人、しかもアイドルという職業がただきらびやかなだけではないのはなんとなく少しだけわかる。「やっぱり、そうなんだ」呟くと、悟は少し表情を曇らせた。「――好きな子が見てくれるとは限らないっていうのは、辛いかな」「……え」
七つ目のタルトをたいらげて、ホイップクリームのたっぷり乗ったプリンへと手を伸ばす。口の中が甘い。吐く息も甘い。こんな食生活を続ければ、糖尿病へとまっしぐら。でもいいの。これはやけ酒ならぬやけ糖分だから。明日からはちゃんとご飯食べるから。口の中でさらりと溶けるホイップクリームを飲み込んで、甘く重いため息をつく。わかってるわかってる、よくわかってる。好きな子がいる。そんなの、当たり前のことじゃないか。別に特別なことでもなんでもない。都紀が悟に恋するように、悟も誰かに恋してるんだ。ベッドによりかかり、殺風景になった部屋を見回した。今悟に囲まれた部屋にいるのは辛すぎる。今まで集めたCD、DVD、写真集などなどには、しばらく押入れで眠ってもらおう。そう思いながら黄白色のとろけそうなプリンを味気ないプラスチックのスプーンですくった。徳国相思露 液体媚薬
どんな、人なんだろう。あの悟が好きになるくらいだから、きっとすごい美少女だ。たとえば、そうだ、今やってる映画の主役を張ってるあのアイドルみたいな、華やかな美少女。「……あは。美男美女カップル」笑ってみる。空元気だ。言葉とは裏腹に飛び出てくるのはため息ばかり。ため息が、重い。
一晩明けて、立ち直るとまではいかないけれど少し心は落ち着いた。だけどなんとなく学校に行きたくなくて、うだうだうじうじワイドショーを眺めていたらおはようというにはちょっと遅い時間に起きた兄によって、弁当箱と一緒に家から叩き出された。しかたがないので自転車をとろとろ押しながら、普段の三倍は時間をかけて学校に行く。時刻はすでに五時間目の終了間近。職員室の遅刻者名簿に工藤都紀と殴り書き、折り悪くちょうど職員室でまったりしていた生徒指導からお小言をいただき、二年C組へ。もう六時間目の授業が始まっていたので、後ろのドアを静かに開けて、窓際二列目一番後ろの自分の席に視線をやって、瞬間逃げ出したくなった。東方神龍
いるし! 藤本悟!窓際の一番後ろの席で少し気だるげに頬杖ついて、ぼんやり黒板を見つめている。細い黒ぶちの眼鏡が嫌味なくらい似合っていて、ああ王子様は眼鏡をかけてもやっぱり王子様だ、とぽーっとしながら思った。すてき、すてき、今日もすてき。ああ、また惚れ直しちゃ……じゃなかった、惚れ直してる場合じゃない。今の心情にふさわしい効果音はどきん、じゃなくて、ずきん……っ(ハートが痛む音)だ。失恋、したんだから。胸がきゅんきゅん疼いて苦しい。そっと視線を外そうとがんばっていると、午後の授業に飽きたのか、ふと、悟が、こちら、に、顔を、向ける。目が、あった。悟、微笑む。
都紀、たじろぐ。悟、唇だけでおはよう。都紀、黙ってドアを閉める。そのまま、屋上に向かってダッシュ。ぜーぜー息を切らしながらお気に入りの貯水槽の裏へ回り込み、腰砕けになって座り込む。耳まで燃えそうなほど熱いのは絶対走ったからなんかじゃない。どうしよう。どうしよう。わかってるのに、どんどん好きになっていく。抱えた膝に顔を埋める。溺れそうだ。この感情、どうにもならない。苦しくて苦しくて、肩が震えてどうしようもなかった。旗人減肥套盒
「――さん、工藤さん」軽く肩を揺さぶられ、都紀は薄く目を開く。少しうとうとしていたみたいだった。そういえばゆうべあまり寝ていない。延々と直射日光に晒されていた頭は上手に回ってくれなくて、まとわりつく何かを払い落とすように頭を振る。「こんなところで何してるの? 倒れるよ」都紀を起こした人影が顔を覗き込んでそっと手のひらを額にあてる。少し低い体温が気持ちいい。長いまつげ、薄い唇、きれいなきれいな――。「ちょっとうとうと……っっっっっ!!」覚醒した頭に一気に流れ込んできた情報に、声にならない奇声をあげた。「ふ、ふじもとくん! どうしたの、こんなとこで!」「それ、こっちのセリフだよ」なんとなく少し機嫌が悪そうだ。気まずい気分でごまかすようにへらへら笑うと、都紀を凝視した悟の表情がふと曇る。徳国 増大宝
「……もしかして泣いてた?」「え?」「目、赤いよ」「あー……ちょ、ちょっと、虫歯がしくしく痛くって」わざとらしくほっぺを押さえて痛がるポーズ。われながらあまりにも嘘くさい言い訳だけど、とりあえずそれ以上の追求はなかった。「……そっか。様子がおかしかったから心配してたんだ」「……」罪悪感。大嘘つきだ。額が擦り切れて血まみれになるくらい土下座したい。後で必ず歯医者に行こう。「ごめんなさい、ほんとごめんなさい」思わず呟くと悟が少し怪訝そうにする。そして何か言いたげな雰囲気で都紀の隣をさした。「ねえ、隣いいかな?」返事をする間もなく腰を下ろした悟に、喉の奥で悲鳴を飲み込む。今の都紀にこの距離はちょっと近すぎる!心臓が口から飛び出しそうだ。近すぎる。ため息さえも鮮明に感じるような近さに、自分のドキドキが漏れていないか不安になる。増大宝V12
――好きな子が見てくれるとは限らないっていうのは、辛いかな。「藤本くんの好きな子って……どんな子」不意にあの日の言葉がよみがえり、無意識に口からこぼれていた。悟は少し目を見開いて、けれどその次には、とてもとてもなんだかすごく優しく笑う。「いい子だよ。すごく」はにかんだ笑顔が胸に痛い。藤本悟にこんな顔をさせるなんて、その子はとんだ幸せ者だ。その子に対して憎らしいとか、妬ましいなんて感情は、湧いてこない。だけど、だけど。「……いいなぁ」「え?」こちらを向いた悟の顔から笑顔が消えた。「くどう、さん」整った眉がきゅっと寄る。「どうして、泣いてるの?」伸ばされた指先が、都紀の頬に触れる直前、ためらうように震えて止まった。栄昌肛泰
「工藤さん!?」気がつくとその場から逃げ出していた。決して背後は振り返らずに、きちんと並んだ白い階段を一気に駆け下りる。頭の中がぐるぐるしてる。どうして逃げ出したのか自分でもよくわからない。だけど、とにかくあの場からいなくならないと、と思った。耳の奥で鼓動がうるさい。心臓がそこにあるみたい。乱れる息を無理やりつなぎながら都紀はひたすら走った。走って走ってずっと走って、何度目かの踊り場を駆け下りて、スカートをなびかせながら片足を軸にくるりと体をひるがえす。その瞬間視界の上の端の方、ちらりとなんだかすごくありえない光景を見た気がした。「工藤さん!」あれ、と一瞬足が止まる。どうして悟が。妙に思いつめたような顔をして、息を切らしながら。明らかに都紀を追ってきている。気づいた途端に足がまた動き出していた。逃げ足の速さだけなら自信がある。最後の五段を一気に飛び降り、ちらりと背後を振り返る。階段を降り始める悟を視界に映して、もう一度床を蹴った。 杞菊地黄丸
「工藤さ……あっ!」背後で狼狽した悟の声が聞こえた。思わず振り返った都紀が目にしたのは階段を踏み外した悟の姿。傾く体、手すりを掴み損ねてもがく指、見開かれた目。窓からさしこむ夕日が宙に舞った悟を照らして、まるで教会のステンドグラスみたい。ああ、まるで夢のよう。本当にきれいで口をぽかんと間抜けに開けて、悟から逃げていたことさえ本気で忘れて思い切り見惚れた。ああ、美形ってやっぱりどんな状況でも美形なんだ――。じゃなくて!「悟君っ!!」思わず反射的に、落下する悟に向かって腕を伸ばしていた。「受け止めるからっ!」「やめっ……!」と、大見得を切ったはいいけれど、いくら無駄に身長が高くても体力体格その他諸々は至って平均的な都紀が、いくら細身で華奢なつくりをしているとはいえ、健康な高校二年生男子(+重力)を受け止めきれるわけもない。ぶつかった衝撃で都紀は崩れて、二人はそのまま勢いでもつれあうように転がりながら、硬いコンクリートの壁にぶつかってやっと止まった。天仙丸7号
腕だの肩だの腰だの背中だの、ぶつけまくった体のあちらこちらが痛くて思わず呻く。重しが載ったみたいに体が重い。重し、重しが。重し!? 違う、これ重しじゃない。投げ出された都紀の上に悟の体。言い方を変えると、悟の下に都紀の体。まるで押し倒されたみたいな、ちょっとやそっとじゃ経験できない密着状態。誰かに見られたら確実に誤解されるとか、全国の藤本悟ファンに確実にたこ殴りにされるとか、そういう問題じゃない。このままだと都紀が死ぬ。動悸息切れその他諸症状で!だって、本当にやばいんだ。シャツ越しに感じる体温とか、耳元で聞こえる掠れた吐息とか。「も……だめ」このまま死ぬのもこれはこれで幸せかも、と思い始める頃悟がゆるゆる体を起こす。こちらを気遣うような物憂げな悟の表情。床に転がったままそれを見上げ、うっとりしながら吐息を漏らした。天仙丸3号
「工藤、さん、怪我は」怪我? そうだ、けが。怪我。「怪我! 悟君大丈夫!? 怪我! どっか怪我!」腹筋の力で飛び起きて、座り込んだ悟に詰め寄る。「平気!? どっか痛くない!? どこも平気っ!?」都紀は別に平気だ。あざを作ろうが骨を折ろうがどんな怪我をしたって別に平気。だけど悟には、悟にはたとえ擦り傷一つ負わせちゃいけない。「工藤さんこそ……立て、る?」「うん、あたしは平気。大丈夫だから」明るく笑うと、立ち上がった悟が都紀に向かって手を差し伸べる。これは、その、その手に掴まって立ち上がれ、ということか。「あ、あ、あ、ありが、と……」口から飛び出そうな心臓を必死になだめながら、線の細い悟の手を取る。ああ、生きててよかった。今は辛いけど生きててよかった。軽く腕を引かれ、右足首に力を込める。その途端――。天仙丸6号
「いっ!」鋭い痛みが右足を駆け抜け、その場にへたりとくずおれた。「どうしたの!」「……ひねった、みたい。で、でも、たぶん、うん、だいじょうぶ」えへへと悟に向かって笑ってみせる。「大丈夫じゃ、ないよね」「ううん、全然平気!」脂汗が浮いてるのはきっと気のせいだ。「嘘だ」「平気、平気平気、あたし強い子!」「立てないのに?」「……」「痩せ我慢したっていいことないよ」「……いたいです。すごく」脂汗はやっぱり気のせいじゃない。激痛が脈拍にあわせて襲ってくる。これはちょっと洒落にならないかも。「肩貸すから、保健室行こう」かがみこんだ悟の肩にためらいながらも腕を回した。近すぎる体温に息が止まりかける。なんとか左足だけで立ち上がり、間近の悟の顔をちらりと見上げた。「大丈夫?」耳元で直接聞こえる声はCDなんかと違って心臓に悪い。このどきどきがどうか悟に伝わらないように。心の中で祈りながら保健室へと向かった。天然山羊の眼
放課後の保健室、一般生徒の帰宅時間と部活終了までのぽっかり空いたエアホールみたいな時間帯、頼みの綱の先生は今日は一年生の遠足の引率で鎌倉まで行っている。いなくてもいい時にはいるくせに、肝心の時に限っていないなんて。ああ、なんて間が悪い。黒いビニールクロスの長いすに腰掛けたまま本気で死を覚悟する都紀だった。「あ、ああああああああああの、あたし、これくらいなら……!」「動かないで、もうすぐ終わるから」誰もいない保健室で四苦八苦しながら裸足になると、右足は真っ赤に腫れ上がり、自分で言うのもなんだけどすごく痛々しい有様だった。どう考えてもこの状態で自転車をこいで帰宅するのは無理なので、家に電話をかけて迎えを頼んだ。保険証も持ってきてって頼めばよかったなんて思いながら迎えを待って座っていると、なぜか都紀の足元に座り込む悟。たじろぐ都紀に苦笑して、「大丈夫だよ、痛くしないから」なんておっしゃった。痩身の語 第三代
いや、痛いとか痛くないとかって問題じゃない。のけぞってきつく目を閉じて、足をそっと支えて持ち上げる体温や、怪我を避けて優しく触れる指の感触にひたすら耐える。嬉しいんだか苦しいんだかわからない。だけどこの思い出にすがって都紀は一生生きていける。――嘘。「ごめん、痛かった?」腫れた足首に包帯を巻き、都紀の眉間によったしわに目をやってつぶやく悟。「……だ、だいじょぶ、です」のけぞったまま頬を赤くして熱に浮かされたようにつぶやいた。だめ、心臓が飛び出る。都紀の隣に腰を下ろして悟は何かを考えるように視線を伏せる。「ごめん、ね」苦いものをこらえるような声に都紀は困って悟を見る。「えっと……なんのことでしょうか」「泣かせて、怪我までさせちゃって。ほんと、ごめん」「そんなのっ、全部あたしが勝手にやったことだもん! 全然平気、悟くんが気にすることじゃないってば」慌ててまくしたてると、突然悟が顔を上げた。神奇女用催情口服液
「名前」「……なまえ?」「どうして、名前呼んでるの」……あ。墓穴掘った!「な、なんでもない! せっかく同じクラスなんだし、いつまでいつまでも他人行儀なのもなんだかなーって感じだし、ちょおっとフレンドリーになってみようって思っただけ! べ、べつに頭んなかじゃいっつもさとるくんってハートマークつきで呼んでるとかってわけじゃないから! TIMEのファンクラブとか入会してないし、CDとか写真集とか全部持ってるとかじゃないから! ましてや、悟くんのこと恋愛対象として大好きです、なんておこがましいこと全っ然思ってないから!」もはや自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。悟はなんかぽかんとした顔で都紀を見ているし、もう最低、泣きそう。美形ってやっぱこんな表情させても美形なんだ。じゃなくて。蛇胆川貝枇杷膏
「今のって」悟の声が妙に真剣なのが居心地悪くて、顔をそらした。さっきの発言が、墓穴どころか自分からその中に飛び込んで土をかけて踏み固めちゃったくらい、色々大暴露していることくらい自分でもよくわかっている。これからどんな顔して悟と顔を突き合せればいいんだ。悟に恋をするだけでも申し訳ないのに、いつも見てます、大好きです、なんてストーカーじみたことまで言ってしまうなんて。ああ、大体好きな人がいるっていうのにこんなこと言われても困るだけだろうに。ぐるぐるぐるぐる、あまり回転数のよろしくない頭で悩む。「その……ずっと見ててくれてたってことで、いいのかな」確認するような悟の言葉にやけっぱちな気分でうなずく。後はもうどうにでもなれ。引かれようがなんだろうがもう覚悟はした。キモイでもキショイでも、悟が言えばきっとすてきな言葉に聞こえるはずだ。善存片
「だったら、すごく嬉しいんだけど」自分の耳を疑った。「あ?」思わず真顔。予想していないことに直面すると、人間って固まるんだ。「……なんで」もしかしなくてもファンサービス?固まったままつぶやくと、悟の視線が少し揺れる。長いまつげがアンニュイな感じに伏せられる。あ、きれい。ためらうような短い沈黙。「やっぱり、好きな子が応援してくれてたら嬉しいと思わない?」今、とんでもなく都合のいい、めちゃくちゃな幻聴を聞いた気がする。まさかね。きっとこれ夢だ。本当は階段を踏み外した悟とぶつかった時に、どこかに頭でもぶつけたんだ。それで元から締まっていたかどうかもあやしい頭のネジが二、三本抜けて夢でも見ているに違いない。試しに立ち上がってみよう、夢だからきっと痛くないはず。善存多維元素片
せーの!「あ、バカ!」「いっ!」痛かった。そんな都紀をあざ笑うように。ものすごく痛かった。なんだよ、やっぱり痛いじゃん。夢じゃないじゃん。「何、やってんの」「……夢だから、きっと痛くないと思ったんだけど」けげんそうな表情がイタイ。痛いじゃなくてイタイ。ニュアンス的に。「だ、だって、言ってたじゃん。好きな子、いるって」悟が目を見開いた。「工藤さんって……」「な、なに」「……何でもない。気にしないで、――都紀ちゃん」「……」都紀ちゃん、つきちゃん、つ、き、ちゃ、ん。ああ、やっぱりこれ夢だ。試しにもう一回立ち上がってみよう、今度はきっと痛くないはず。せーの!「いっ!」「バカ!」夢みたい。夢じゃないけど夢みたい。呆れたような悟の笑顔が嬉しくて、なんだか泣きそうな気分になった。ああ、溺れそう。三葉減肥茶
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